
転んだ私の教訓
- Reiko Yamazaki
- 6月29日
- 読了時間: 3分
「卵は一つのカゴに盛るな」という言葉を、私は画家として活動し始めた頃から何度も耳にしていました。
投資の世界でよく使われる格言ですが、当時の私は、それがアーティストにとってどれほど重要な教えなのか、本当の意味では理解していませんでした。
絵を描くことや研究に夢中で、個展での収入だけで生計を立てることができると信じていました。創作に集中したい一心で、他の収入源を確保することを後回しにしていたのです。しかし、現実は甘くありませんでした。収入源が一つだけだと、一度でもつまづいて転ぶとなかなか復活できないのです。
そして実際に、私はその状況に陥りました。
まさに卵がほぼ割れた状態になってしまい、立ち上がれずに2年という長い時間が過ぎてしまいました。この苦しみは、ある程度は想像していたことでした。それでも対策を講じなかった自分を、今では大馬鹿者だと思います。
夜中に目が覚めて、「なぜあの時、もう少し現実的に考えなかったのか」と自分を責める日々が続きました。
でも、よく見るとかろうじて卵が一つ残っていることに気づいたのです。完全に全てを失ったわけではありませんでした。
過去の経験や実績、研究、夢中になっていたことは、自分自身に身についています。
それは他人によって消されることはない、大切なものです。
それさえあれば、何度でも立ち上がることは不可能ではないのです。
最後の卵の可能性がどうなるかは、これからの私の行動次第です。振り返ってみれば、卵が一つでも残っていたのですから、運はすごく良かったのかもしれません。
今、私はその残された一つの卵を大切に育てながら、同時に他の収入源についても真剣に考えています。卵が割れた時、私が真っ先に始めたのは、自己投資でした。資格の取得、作品に関連できそうな仕事、見渡すと画家でもできる副業はたくさんあります。
今は生きていくだけで精一杯で、制作に重きをおく余力はありませんが、もう二度と、収入を一つの源に依存するような危険な綱渡りはしたくありません。
画家だからといって、創作だけに専念すればいいというのは幻想でした。
それができるのは、ごく一部の才能を持った人達で、とくに私のようなズバが抜けたセンスも才能もない普通の場合は、不可能でした。
ただ単に今までは運がよかった。それに甘えていた自分の慢心だろうと思います。
アーティスト活動のためには、現実的な収入源の確保が不可欠です。アートへの情熱を保ちながら、現実的な生活基盤も築く。これが、長く画家として活動を続ける秘訣だと、痛い経験を通して学びました。
